|
黒い犬のつぼ焼き
2004年1月6日のつぼ焼き
"おれおれとは言わないが、おれおれ詐欺だと思う","","午前中のことである。もうすぐ昼になろうという頃かな。パソ横で電話が鳴った。私は付録作りに失敗していて、もうこうなったら鼻から違うものにしょうと、取り置きのいろいろを出したり引っ込めたりも、いよいよどんづまりとなっちゃって、もうどうとでもしてくれとわめきながら、わめくって言ったって心の中でだけれど、ええいっと選んだものを割付をしているところだった。なんか、うまく行かないのでこれじゃあ、おまけだけが楽しみの方のご希望に添えないしとか思い、気持ちは真っ黒だった。そこへ電話。","","目はパソの画面から離れないで、右手でマウスなんか動かしていた。"
"「○○△△さんのお宅ですね」","「はい、そうです」","「私は神奈川警察のなんとか署の交通第二課のなんたらいうものですが、○○△△さんが人身事故を起こしました。場所は新横浜駅前のみずほ銀行の交差点です、知ってますよね、みずほ銀行」"," マウスを離し、筆記道具に手が伸びる。","「はぁ、○○△△が、ですか、○○△△が加害者なのですか」"
"「○○△△さんが運転していました」","「○○△△が加害者なのですか、被害者なのですか」","「ぷっん」","","まったくでたらめだと思った。でも、家の方の名前をフルネームで言われてみると、聴かないわけにもいかない。なぜそう思ったのかというと、ひとつは簡単すぎることだけれど、家の方は仕事で車の運転はしない。まあ、仕事さぼってきれいな姉ちゃんとドライブというのも考えられなくもないが、いくらなんでも日は仕事始めだしさあ。"
"もっと嘘だなと思ったのは、相手の声だった。どことなく聞き覚えがあった。マンションの電話セールスの声にあの声と話し方があった。かなり聞き慣れた雰囲気の声であった。興味がないと断ると、頭金も入らないし儲かる話しなのに食い下がって、じゃあ将来のことはどう考えているのかとまくし立てる。切るよというと、バカ野郎と怒鳴られたこともある。その時の、トーンの高さと同じものを感じた。で、突然切られると、やっぱなと思ってほおっておいた。しばらくしたら妹から電話があって、話しのついでにその話しをすると、念のために家の方に連絡して見ろと強く勧める。で、電話してやつにも楽しい話題を提供した。結構うけた。","","昔、お風呂屋さんとかに人を集めて、景品を配ったりしながら高額の蒲団を売るグループがいて、軒並み言葉巧みに誘ってお風呂屋さんへ連れて行って、トランス状態のようになったご近所の人たちが高額蒲団を買わされた事件があった。その高額蒲団売りの人たちの話し方や声の感じにも似ている。","","さらに昔、小径書房という出版社の端っこの机を借りて仕事をしていたことがあった。そのビルの同じフロアーにはもう一つ会社が借りていて、そこは人材派遣の会社だったが、それはひどくインチキで恐喝を生業にしていた。手口は零細企業に人材を斡旋して、しばらくすると話が違うと恐喝するのだ。もちろん斡旋されて働きに行った人は仲間なのでただ者ではない。愚連隊である。その恐喝の声のすさまじさと、合いの手に入れる机や椅子を蹴飛ばす音に、こっちがうんざりする。いつか捕まらないかと祈るばかりだったが、なかなか捕まらなかったなあ。"
"","さらに、これも少し昔だけれど、近所にサラ金の取り立てが来ては怒鳴っていった。ビラも貼ったし、ドアとかを足で蹴飛ばしたりしていた。あの声も耳に残っている。","","そういうたぐいの声の特徴がどこからか漏れて、こちらの耳に届いたのだと思う、今日の電話。ところで、午後から、猫が狂ったように探し歩いている。つい最近、春猫のお腹の大きかった子が車に轢かれて死んだばかりである。立て続けだなあ。今鳴いているのは春猫の残った方の子だから、探しているのは母猫のことか。あるいは秋猫のことか。まったく、気が気ではない。何度か、あちこち見て回るが、どこかにはまったり落ちたりしていないし、車にも轢かれた様子がない。あー、この寒空に、もう一度探しに行ってこよう。",""
|
|
|